「この子は集団行動が苦手だから……」
ぽつんと聞こえた妹の声に、どきりとした。つい、先ほどまでふたりで小学生の頃の話をしていたことを思い出した。確かに、わたしも妹も集団行動は得意でなかったかもしれない。わたしは油断すると、うっかり群れを乱してしまう。別のことが気になって、集団にいたことを忘れ、気づくと集団から抜け出してしまう。集団に交じろうと気を張って過ごしていたことを思い出した。
今日の晩のおかずは、三つ葉と玉ねぎのかき揚げだ。
天ぷら鍋の中をのぞきこみながら、「この子」と妹によばれたのは玉ねぎのことだった。かき揚げを揚げているうちに、まとまっていくかき揚げの中から、ふらりと抜け出してくるのが玉ねぎだということらしい。
油の中で揚がっていくかき揚げは、箸で寄せながら形を整えていく。玉ねぎが抜け出しそうになるのをみつけたら、そっと箸で元に戻してやる。
目をかけて、手を添えて。形を整えながら揚げていく。それでも、かき揚げの中から抜け出し、元の形に戻らなかった玉ねぎたちもいる。その玉ねぎたちは、玉ねぎだけでおいしく揚がる。かき揚げとは違ったけれど、おいしいフライドオニオンになっている。
わたしにも、目をかけて、手を添えてくれた誰かがいてくれたのかもしれない。そのおかげで、集団に交じれなかったとしても、自分らしい何かを支えるための感情を育てられた、のだと思う。 今は、わたし自身を生きようと自分軸を再確認しているところ。
集団に属し続けようと、集団とのほど良い距離を探り続け、そのうちに集団行動をする中から抜け出した。会社の中での働き方を探り続けていたけれど、会社の組織を抜け出し、そこに戻らなかった。わたしもフライドオニオンのように、自分らしいと胸を張れるわたしになれていっているだろうか。
そんなことを考えながら作った晩のおかずは、こんがりと。少し多めに火がとおった。